谷川俊太郎さんがカバーの見返しに推薦文を寄せていて、ヘレンのことを“あしながおじさんに会いそこなったジュディー・アボット”と表現していらしたのが絶妙でした。ヘレンとフランクのやりとりだけでなく、フランクと同じ古書店に勤めるべつの女性からヨークシャー・プディングのつくり方を教えてもらうくだりなど、なんでもないようだけれどあたたかなエピソードがとても好きです。メールがなかった時代には、そういえば“手紙”という手段があって一面識もない相手と心を通わせたり、遠く離れていても親切にしたりできたんですよね。時間と手間はかかるものの、そのぶんこんなふうに礼儀と相手への気遣いにあふれた密度の濃い交流ができたのかもしれません。 表紙には、かつてロンドンのチャリング・クロス街84番地にあったフランクの勤める古書店「マークス社」の写真が使われており、表4にはふたりが交わした夥しい数の手紙に貼られたであろうアメリカとイギリスのさまざまな切手があしらわれていました。 中ページには黒いセーターに赤いチェックのスカート、本の包みを抱えた金髪の少女がお店から出てくる写真が載っていて(右画像)、さらにマークス社の跡地がわかるロンドン主要部の地図つき! 読者が実際にその場所を訪ねてみることができるようになっているのです。写真を眺めていると、店頭に出ている均一台といい少しだけ見えている店内といい、とてもいい感じで今はもう存在しないお店だというのが残念。現在、店があった場所には記念に真鍮のプレートが掲げられているそうですが⋯⋯今すぐこの小さな入口から店内に駆け込んで、本を物色したい衝動に駆られてしまいます。
by interlineaire
| 2006-11-30 16:47
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