人気ブログランキング | 話題のタグを見る
乙女のくらしと月経バンド
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_02015664.jpg
「大阪くらしの今昔館」で開催の「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」展へ。明治〜昭和初期にかけて「モダンガール」と呼ばれる新しい女性たちが闊歩した時代に、彼女たちの暮らしを彩った化粧品や雑貨のパッケージを中心とした展示です。会場は目を輝かせた若い女性たちで大盛況。かわいいものは時代も世代も超える、ということを目の当たりにしました。「どうして今は、こんなふうにかわいくできないんだろうね?」という会話が聞こえてきて、背後でぶんぶんと激しく頷いた次第。

佐野宏明さんが長年にわたり蒐集したコレクションを中心に、資生堂やクラブコスメチックスなど企業の資料もたくさん。一部をのぞき、ほとんどの展示物が撮影可でした。膨大な資料のなかから特に心に残ったものを、佐野さんのご著書を拝見してわかったことなども付け加えつつ、振り返ってみたいと思います。なお、画像の東郷青児画によるカルピスのポスターは、京都にある「想い出博物館」の北川和夫さんの所蔵だそう。




乙女のくらしと月経バンド_d0051304_21403994.jpg
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_21540496.jpg
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_20473436.jpg
展示のなかで、最も印象に残った「月経帯」コーナー。ナプキンやタンポンが登場する以前、大正から昭和初期にかけては「月経帯」が女性たちの必需品だったとか。実際の商品はショーツ型のものだったようですが、キャンデー缶を思わせる佇まいにこれが生理用品?!とびっくりでした。ブリキ缶に孔雀やお花の絵があしらわれており、英語の表記がなんともおしゃれ。

この装飾過多ともいえる華やかさは、当時、ヨーロッパで主流だったビクトリア朝様式のデザインを模倣しているから。ただし、よく見ると「エンゼルバンド」には天使ではなく日本の天女があしらわれていたりと、和洋折衷のものも。時代がすすむにつれこういった日用品のデザインはよりシンプルに、日本人の心に響くかわいらしさを追求するようになっていくのですが、この頃のクラシカルさも捨てがたい。憂うつな日も、すてきなパッケージにさぞ心慰められたことでしょう。

初登場が大正2年のビクトリア月経帯、続いてフレンド月経帯、エンゼルバンド、メトロンバンドと各社が次々と後発商品を発売。人気はビクトリアとフレンドが2分していたとか。現物が残っているということで、女性史を語るうえで貴重な資料といえると思います。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_23300232.jpg
資生堂の石鹸の箱いろいろ。ふだん使いのほか、贈りものとしても喜ばれたそう。青磁色はこの頃の市場調査で最も好まれる色だったとか。中央の“乙女の横顔”は、他社でも定番のモチーフでした。石鹸を使い終わった後も、絶対に捨てられそうにないすてきな箱ばかり。おそらく、個人が手紙や小物を入れるなどして大切に保存していたものが、こうして運良く後世に残ったのではないかと想像。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_01012661.jpg
左は資生堂といえば……の山名文夫デザインによる、モダンカラー粉白粉。右は資生堂のロゴ入り、セルロイドの石鹸ケース。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_23171664.jpg
中原淳一のキュートな絵があしらわれた10代向けのジュニアコスメは、レート化粧品のもの。これをプレゼントされた少女の、飛び上がるようにうれしい気持ちが想像できます。今でこそジュニア向けのおもちゃっぽいコスメっていろいろありますが、昭和28年にすでにこんなシリーズがあったとは……! しかし残念ながら、この翌年にレート化粧品は廃業してしまうのだそう。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_23360267.jpg
上は「クロバー」という化粧品メーカーのポスター。断髪のモダンガールが描かれています。
下は圧巻だった、粉白粉の容器群。月に腰掛ける乙女、蝶、帽子などロマンティックなモチーフばかり。女性のファッションがきものから洋服に移行しつつある過渡期でもあり、こういった粉白粉は洋装時の薄化粧や化粧直しに重宝されたそう。モダンなデザインの粉白粉やパフ、香水、口紅が所狭しと並ぶドレッサーを想像してしまいました。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_23591046.jpg
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_23460106.jpg
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_00003780.jpg
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_20365242.jpg
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_20390431.jpg
最も衝撃的だった、左下のピカソ美化学研究所の「ピカソ粉白粉」。耽美というかゴシックというか、少し退廃的なムードさえ漂う意匠に目が釘付けに。こちらは大阪に現存する会社で、このまつ毛が異様に長い女性の絵がトレードマーク(Click!)。現在はOEMが中心となっているようですが、モデルチェンジしつつ、同じマークが使われていました。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_00321310.jpg
手芸用品のコーナーに、クロバーの東郷青児ソーイングセットを発見。
乙女のくらしと月経バンド_d0051304_22152488.jpg
少女誌のふろくを思わせる佇まいがたまらない、脂取り紙いろいろ。下段の左2つが東郷青児っぽいのですが(左は現存するウテナ、右はレート化粧品のもの)、明記されていませんでした。青児はレート化粧品と人気を2分した、大阪のクラブ化粧品に一時期ですが籍を置いていたことがあり、その後も顧問を務めていたので違うのかもしれませんね。

佐野さんが著書のなかでお書きになっていた、「まるで、前世にそれらのデザインに日常的に囲まれていたかのような幻想を抱きながら……」という言葉がとても印象的だったのですが、これらのデザインの魅力はまさにそこにあるのではないでしょうか。初めて見るのに、はっと胸を衝かれる懐かしさ、そして甘いときめき。夢中で展示に見入る女性たちの熱気から、小さくささやかなものたちの持つ秘めた力を、改めて感じた展示でした。

by interlineaire | 2024-12-16 14:55 | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< 別府にて〜東郷青児のモザイクタ... 石阪春生先生のこと〜湊川さんぽ >>