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『AKAI TORI』の思い出。
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2018年2月に惜しまれつつ閉店した、心斎橋の『COCOA SHOP AKAI TORI』。プライベートではもちろん、取材でも幾度もお世話になり、特別な親しみを感じていたお店でした。「アンデルセン童話『赤い靴』の少女カーレンのように踊り続けた45年間でした」と、お別れカードの文言までもが乙女でさすがだ……と感動したのですが、同年12月より、後継のかたが新業態で再オープンされたようです。再開はもちろん嬉しいのですが、もうマダムの村田紀美代さんはいらっしゃらないのだなあ……と思うと一抹の寂しさを覚えます。

この頃、『戀愛譚』のあれやこれやでなかなかゆっくりお茶する気持ちの余裕がないまま、ついに最終日となってしまい、営業終了後にせめてご挨拶だけでもしたいと、ご迷惑を承知でうかがいました。夜なのでムーディな雰囲気になってしまいましたが、記念に写真も少しだけ撮らせていただいたので、今更なのですがご覧になってください。
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これは窓際のすみっこ、いちばん好きだったぬいぐるみ席。雑誌取材ではどうしてもスイーツの写真か内観がメインになってしまうので、このぬいぐるみ席のカットは誌面から外されてしまうことが多く、残念に思っていたのでした。せめて自分のブログで悲願を果たしたいとここに掲載しておきます。
マダムと店長さん、おふたりとも大歓迎してくださり、勇気を出して行ってよかったなあ、と安堵しました。少女のような無邪気さと大人の気遣い、出会った人すべてに惜しみなく何かを与えられる村田さんのお人柄にひそかに憧れていました。




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お店の看板ともなっていたバードネストケーキ(鳥かごケーキ)の、赤い鳥たちもこの日ばかりはどこか寂しそうでした。ふくろうのお面をつけて完成を待つ、「メデュサ」というチョコアイスデザートもいつか頼んでみたかったのに、時すでに遅し。ですが、2月末閉店というのに愛らしいお雛さまが飾ってあったりと、最後まで日常を慈しむ気持ちを忘れない、気高い乙女スピリットを感じました。
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ぬいぐるみ席の次に好きだったのが、木製の学習机を使った席(下画像)。『AKAI TORI』の創業は1972年。まさに70年代で時が止まったような、寝そべって少女マンガを読んでいたあの頃に一瞬で戻ってしまうような、夢やあこがれが詰まった空間でした。パッチワークのテーブルクロス、ぬいぐるみ、花柄やキャラクターのおざぶ、どこかとぼけた懐かしいテイストの雑貨たち、そして両手で抱えて飲みたいマグカップのココア……とすべてが完璧に“かわゆい”お店でしたよね。
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かつて使われていたマッチと、お店の片隅でひっそりと販売されていたお人形ブローチ。あざやかなグリーンの帽子と、タイツをまとった女の子が胸がきゅーっとなる懐かしい愛らしさで、たまに取り出しては眺めています。AKAI TORIからは、自分の好きな世界観を通して社会と関わっていくことや、誰かに楽しんでほしいというやさしい気持ちが、長く愛される仕事を創っていくことなど、たくさんのことを教わったなあ……と思います。AKAI TORI、そしてマダムから学んだことを糧に、これからも生きていこうと思います。

by interlineaire | 2021-11-18 15:08 | Comments(0)
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