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天然生活2月号
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そんなわけで、ここ数カ月というものほぼ東郷青児関連の資料しか読んでいなかったこともあって、『天然生活』の連載では書籍ではあまり言及できなかった元恋人・宇野千代の本で好きなものを取り上げてみました。「恋の冒険者、宇野千代という生き方」というタイトルで、千代さまの女としてのカッコよさについて書いています。恋愛小説の古典ともいわれる『色ざんげ』の書影は私物で、最近手に入れた初版本。ふだん、高価な古書はめったに買わない私ですが(笑)、これは青児の華麗なる恋愛遍歴を小説化したものでもあるし、本を出す記念にと思って1週間くらい悩んだ挙げ句に手に入れたもの。

装丁は洋菓子店『マッターホーン』や『こけし屋』、『神田志乃田寿司』などのキュートな包装紙で知られる鈴木信太郎。紅地に白いハイヒールがあしらわれ、かわいらしさとなまめかしさが同居する傑作です。函だけでなく、赤い屋根の家があしらわれた本体も素敵。目録にはそういう記載はなかったのですが、届いてみると千代さまの直筆サイン入りという嬉しいおまけつきでした。

この連載も、気付いたらひっそりと2周年を迎えました。最近、いちばん驚いて感激したのが、連載で取り上げたある作家さんがなんと編集部宛てにお手紙をくださったこと。嬉しいのと同じくらい身が引き締まる思いでもあったのですが、しばらくバッグに入れて持ち歩き、一人のときにこそっと取り出しては舞い上がっていました(笑)。一生の宝物にしたいような、素敵なお手紙でした。これからも読んでくださる方の心にいつまでも残るような、そんな文章が書けるようがんばりたいです。どうぞよろしくお願いいたします!
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by interlineaire | 2008-12-28 23:00 | Comments(0)
らんぷの本 東郷青児
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突然ですが来春、河出書房新社の「らんぷの本」シリーズから東郷青児の本を出すことになりました。ようやく、告知できる段階までこぎつけたのでお知らせいたします。
河出の12月の新刊案内『かわで』(新刊書に挟み込まれる小さな冊子です)にちらっと「これからでる本」として告知を載せていただきました(画像)。正直、お話をいただいた時には美術の専門家でもなんでもない私にそんなことができるのか?とかなり心配だったのですが、あくまでもいちファンとしての視点を大切にまとめたつもり。
「らんぷの本」は、過去に内藤ルネさんや田村セツコさん、宇山あゆみさん、近代ナリコさん等の本を出していて、個人的にも大好きで愛読していたシリーズ。その同じ担当編集者のMさんに声をかけて頂けたことも、私にとっては夢のような光栄でした。

今回は執筆だけでなく台割りなどの編集作業、取材のアポとり、スタイリング小物集めまで担当:自分だったのですが、最初はなにから手をつけていいのかわからず「?」という状態。しかし、デザインはunderson氏、カメラマンは伊東俊介さんと気心の知れたチームでの制作だったこともあり、手探りながらも少しずつ頭の中のイメージがかたちになっていく過程がもう飛び上がりたいほど嬉しく、刺激的な経験でした。《アトリエ箱庭》の幸田さんを筆頭に、奥付に書ききれなかったほどたくさんの方々の協力のおかげで、充分に納得のいく、すばらしい本に仕上がったと思います。また、正式な発売日などは追ってお知らせいたします(1月下旬になる予定)。
ここが出発点になるのか、それとも終着点になるのかはまだわかりませんが(笑)⋯⋯しばらく、ブログではこぼれ話や、今後箱庭さんと一緒に展示なども企画しているのでお知らせなども随時、綴っていきたいと思います。どうぞおつきあいくださいね!
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by interlineaire | 2008-12-23 11:56 | Comments(4)
『黒薔薇(くろしょうび)』のこと
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河出書房新社の新レーベル、「KAWADE道の手帖」シリーズの1冊、『吉屋信子 黒薔薇の處女たちのために紡いだ夢』に「大正時代のリトルプレス、黒薔薇」というエッセイを寄稿させていただきました。
『黒薔薇』は吉屋信子が生涯で唯一、つくったという商業的ではない個人雑誌。「女性が女性に向けて発信するメディア」という視点で、現代のリトルプレス事情とも重ね合わせながら、私自身もつくり手である立場から書いてみました。

ちなみに『黒薔薇』は「くろしょうび」と読みます。佐藤春夫の『病める薔薇(さうび)』なんて本もありますが、薔薇を「ばら」ではなく「しょうび」と読ませるのを個人的にも常々、素敵だと思っていたのでまずはこのタイトルにやられました。誌面では文字数の都合で造本のことなどにはふれられなかったのですが、フランス装を採用し紙質なども吟味した、小さくてシンプルで愛らしい、とっても素敵な雑誌だったようです。

他の執筆者が田辺聖子さん、瀬戸内晴美さん、故・氷室冴子さんなどすごい方ばかりなので(再録が多いですが)、本が届いて目次を見たときは自分がそんな中にまぎれ込んでよかったのかと一瞬、ギョッとしましたが、光栄でした。大輪の薔薇や百合の中の雑草⋯⋯という趣きではありますがよろしければご覧ください。嶽本野ばらさんのインタビューなども収録されてます。詳細はコチラ→(Click!)
 
※原稿を書くにあたっては、不二出版の復刻版『黒薔薇』を参考にしました。この版では、女学生っぽいノリの編集後記がたっぷり楽しめるうえ、当時の広告などもそのまま掲載されているのでより現物に近い雰囲気が味わえると思います。2万円もするので自分で買うのはチョット勇気がいりますが、図書館などには必ずあると思うので機会があればぜひ!手にとってみてください。
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by interlineaire | 2008-12-18 14:23 | Comments(2)
sweet sorrow(スヰート・ソロウ)に就きて
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ここのところ、大正浪漫の絵師「小林かいち」の木版刷り絵はがき&絵封筒の作品集に夢中です。竹久夢二の『港屋』は東京・日本橋の店だったけれど、かいちが活躍したのは今でもある京都・新京極のおみやげ屋さん『さくら井屋』で、登録商標となっているちょうちんのマークもかいちのデザインだったとか。
絵はがきは4枚1組で「若き日よさらば」とか「蝶の嘆き」といった詩的なタイトルがついていて、モチーフはおもに「泣く女」。恋に悩むほっそりした着物姿の女性がワインを飲んで酔いつぶれてたり、泣き疲れて眠ってしまっていたり。赤やピンク、紫といったちょっと扇情的な色使いに、トランプのマークや蜘蛛の巣、十字架といったゴスっぽいモチーフは、今でいうアナ・スイとかの世界観と通じるものがあるかも。

『さくら井屋』は今もそうだけど、修学旅行中の女子高生が多いお店。10代の女の子がおもな購入者である雑貨デザインの世界で、こういう「哀しみ」の表現が定番だったというのがなんとも新鮮でした。私の思春期といえば「ネクラ」「ネアカ」なんて言葉が流行っていて、センチメンタルだったり陰気だったりすることが罪悪みたいに言われた時代だったので尚更。

最近読んだ吉屋信子さんの『處女読本』(大空社)という本に、「sweet sorrowに就きて」というエッセイがあったのですが、かいちの絵はがきや封筒は、きっとこの思春期特有の「sweet sorrow(スヰート・ソロウ)=甘い哀しみ?」にどっぷりと浸るための、絶好のメディアだったのでしょうね。こういう封筒を使って切々と恋文を書いたり、吉屋信子の『花物語』を読んだりしていた大正時代の女の子達が本当にうらやましい! 谷崎潤一郎の小説『卍(まんじ)』にも、このかいち製品についての言及が出てくるらしいので近々、読んでみようと思います。
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by interlineaire | 2008-12-03 03:59 | Comments(0)