わたしの長崎地図
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9月に遅い夏休みで長崎〜五島列島を旅してきました。公共の交通機関がほぼなにもない離島は初めてだったので下調べをしてプランを立てるのが本当に大変だったうえ、50年に一度の大雨という悪天候で土砂崩れによる通行止めなどのピンチにも見舞われ、前半は不安のあまり生きた心地がしなかったのですが(笑)、終わってみればすべてが懐かしく、愛おしく思えます。旅の成果についてはまた、何かのかたちでまとめたいと思っているのでブログではほんのこぼれ話を……。

上五島ではちょっとした縁があって、「マルゲリータ」という教会と修道院をイメージしたプチホテルに宿泊しました。普段は古くとも味わいのある旅館とか、クラシックホテルとかを選びがちなので、こういう今風のセンスでまとめられたところは高知の「7days hotel」以来だったかも(プロデュースは東京の会社ですが、地元の若い人たちが楽しそうに働いているのが印象的でした)。なにより館内に、小さなライブラリーがあるのがうれしかった。



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洋書や一般書もあれこれ揃えているのですが、長崎にまつわる資料がなんといっても充実していました。長崎のガイドブックや旅雑誌の長崎特集号のほか、教会や軍艦島の写真集、シュガーロードにはじまる長崎特有のお菓子の本も。他ではなかなか見ることのできない、長崎の地元出版社が出した本もあり、夜遅くまで読みふけってしまいました……。

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木製のシャンデリアが素敵だったレストラン、「空と海の十字路」。聖堂を思わせるチャーチチェアがありつつ、スタッフのユニフォームがボーダーシャツだったり、どことなく船室を思わせる雰囲気もありました。

晩ごはんはイタリアンだったのですが、あまり見かけないかたちのSTAUBのソテーパン?に熱々が出てきました。underson氏が感動していた五島牛のビステッカのほか、魚派の私は五島鮮魚のカチュッコ(魚のトマト煮のこと)が忘れられません。魚介のうまみが溶け込んだカチュッコのスープを少しだけ残しておいて、締めの布パスタにかけていただく……という趣向になっていました。
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マルゲリータ(Margherita)は、イタリア語でマーガレットのことだそう。ここでしか買えない、かわいいオリジナルのお土産もたくさん。どのアイテムにも、黄色い花弁に白い花びらの、愛らしいお花モチーフがあしらわれています。画像のラムネやケーキのほか、教会をモチーフにしたクッキー、キャンディ、名物の五島うどんや椿油もありました。

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バスルームの案内表示までもがかわいかった。女子は絶対に好きなホテルだと思います。悪天候ではあるものの、なんとか予定通りの旅ができていることを神様に感謝しながらぐっすり眠りました。

最終日、駆け込み的にカステラの「松翁軒」の本店にも行ってきました。長崎には「福砂屋」などたくさんの有名なカステラ屋さんがあるけれど、松翁軒は「読むカステラ」という文芸誌のようなものを出されてたり、文化の香りがするところが気になっていたのです。長崎市内のあちこちに支店がありますが、本店にはコーヒーを飲みながらカステラをいただける優雅なティールームもあります。南蛮趣味というのでしょうか、長崎でしかありえない独特のエキゾチックな内装が素敵でした。
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定番の「カスティラ」と「チョコラーテ」のほか、実はこれが目当てだった松翁軒発行の書籍、「カステラ文學館これくしょん」。自分へのささやかなお土産にしました。
長崎新聞で連載されていた松翁軒の広告を1冊にまとめたものなのですが、森茉莉、宮沢賢治、北原白秋、太宰治、竹久夢二、向田邦子といった文豪たちとカステラにまつわるエピソードが、味のあるイラストとともにみっちり紹介されています。
芥川龍之介が大きなカステラを手に持って、こうして食べるのが旨いのだとパンのようにちぎって食べていた……というエピソードなど、読んでいるとカステラが食べたくなって困ってしまいます。
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こちらはunderson氏が購入した、長崎に16世紀から伝わる民藝品、「古賀人形」の鳩笛。まったく知らなかったのですが、日本三大土人形というものがあり、古賀人形のほか、宮城の堤人形、京都の伏見人形がそうなのだとか。眺めていると思わず頬がゆるむようなユーモラスな表情、陽気であざやかな色が特長だそう。猿や馬、犬といった伝統的な動物モチーフのほか、馬にのったシスター(!)などの長崎らしいモチーフもあって思わず見入ってしまいました。

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これは久賀島という離島で見かけた旅のひとこま。船を降り、迎えの車を待っていたシスター。この島にはお店というものが1軒もなく、自販が港に1個あるだけという環境に衝撃を受けました(その自販も品切れになりがち)。シスターの前に置いてあるダンボールは卵のよう。20代の頃は都会が大好きで、カルチャーメインの旅をすることが多かったのですが、どういうわけか最近はちょっとやそっとでは行けないような土地を苦労して訪れることが多くなっています……。

旅から戻って以来、佐多稲子さんの「私の長崎地図」を読んでいるのですが、長崎は「陽の色、海の色、風の感触、蝉の声、そして少女の脚」までもが東京とは違う、陽の色は「深い黄色」で、海の色は「青に乳をまじえたような、西洋画を思わせる色」だと表現されているのに深く頷きました。
さらに、少女の脚は「陽光をよく吸収して、みんな一様にまっすぐに伸びていた。手でつくったお菓子ではなく、木に出来た果物というようなものに見えた」という一説が印象的でした。長崎の人をひとことで表現するなら「のんきな明るさ」というようなものになるそうで、負の歴史を乗り越えつつ、その気質はいまも健在のように思えました。

ちなみに、私が長崎で忘れられないのは「出津」で見たいわゆる外海。美しさとともに厳しさ、荒々しさがあって、どこか神秘的で、いままでに見たどんな海の表情とも違っていました。もうすこしで読み終わってしまうのですが、しばらくはこの本で旅の思い出に浸りたいと思います……。
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by interlineaire | 2016-11-02 19:29 | Comments(3)
Commented by seta_shijimi at 2016-11-14 20:00
古書のサイトをたどって、ここにたどり着きました。
一昨年の三月に一週間長崎を旅しました。浦上教会前のカトリックの施設に宿泊して、毎朝ミサに預かりました。昔十年ほどキリスト者だったです(ただしプロテスタント)。遠藤周作記念館までバスに乗り継ぎ、見学したあとその裏手から出津の村へ下りました。潮騒がとても印象的でした。出津の教会やド・ロ神父の記念館を訪ね、シスターとお話しし、ド・ロさまそうめんを土産にしました。賑やかな長崎もいいけれど、出津はもう一度訪ねたい。と思わせるところでした。
Commented by interlineaire at 2016-11-15 03:59
コメントありがとうございます。
浦上天主堂前の施設、泊まられたんですね!
私も実は泊まったのですが、いろいろな意味で忘れられない思い出になりました。
朝、アンジェラスの鐘の音で起きられるのが素敵ですよね。
出津へはローカルバスを乗り継いで行ったので本当に着くのだろうかと不安になるほど遠く感じましたが、行ってよかったと思える場所ですよね!
シスターに100年前のオルガンを弾いていただいたり、楽しいひとときでした。
敷地内にヴォスロールという小さな食堂もあるのですが、そこは行かれませんでしたか?
私も出津にはもう一度、どうにかして行ってみたいです。
訪れた日は雨だったので、今度は晴れた日に!
Commented by seta_shijimi at 2016-11-15 19:55
敷地内のではなかったような気がしますが、地元のみなさんがやっておられるところでランチにいたしました。シスターの確信に満ちた信仰が、ほんとうにまぶしかったですね。そうそう、あのバス。ほんとうにつくのかしらと思いましたね。また拝見させていただきます。すばらしい思い出をありがとうございました。
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