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こんな風に過ぎて行くのなら
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2010年もあっというまにひと月が過ぎようとしていますが、あいもかわらず原稿書きに追われています。人生を一日にたとえるとしたら、私は今何時頃なんだろう?なんてことをよく考えるのですが、今までは明らかに「午前中」だったけど、ぼんやりしているうちにそろそろお昼が近付いているのでは……と思うと今さらながら驚いたり、焦ったり。

ところで最近、ショックだったのは浅川マキさんの訃報。ちょうどエッセイ集『こんな風に過ぎて行くのなら』を読んで、あまりに自分にしっくりくるのに驚いていたところでした。乙女系を装いつつ、どうしても根はアングラな私です……。ビリー・ホリディや宇野千代、野中ユリについての記述のほか、特にすてきだったのは、彼女が神戸で定宿にしていたという古びたホテルについての、まるで小説のような一節。抜粋すると、

「女主人は年老いた品の良い美しいひとで、少しびっこをひいていて、突然に行ってもあき部屋はある。それでも時々船員が泊まりに来て、このホテルは何とかやっているらしかった。今年に入ってわたしはもう何度か同じ部屋に泊まった。1915年に描いた絵が飾ってあって、着物を着た美しい女が本を読んでいるもので、その絵はこのホテルの女主人の若い頃に違いなかった。
泊り賃の安さはともかく、この女主人はホテルが古いまんまな事をちょっぴり気にかけていた。実際、わたしはこの部屋に座っているだけで、心地よく腐って行くように思えて来るのだった」

60才を越えても巡業しながら旅に生き、倒れたのもホテルの一室。永遠の流れ者ということばが似合う方だったと思います。大阪や京都の公演でも仲間達から離れて必ずそこに泊まっていたそうで、彼女にとってもはやそのホテルは「泊まる」というより、「帰っていく」場所だったのだとか。具体的な名称や所在地は残念ながら何も記されていなかったのですが、いったい、どこのホテルだったのでしょう。といっても1972年に書かれた文章なので、もうとっくになくなっているか、あったとしても建て直されているのかもしれませんね。マキさんの歌では『ふしあわせという名の猫』が好きです。

*画像は最近、よく出没している北浜のエルマーズグリーンカフェ。京都『カフェ工船』の豆を使ったおいしいコーヒーと、エルマー少年?をイメージした巨大なクッキー。
by interlineaire | 2010-01-19 16:52 | Comments(2)
Commented by テカールユミ at 2010-01-28 02:08 x
こんにちは。
わたしも浅川マキのエッセイ借りてきました。
これから読みます。
なんか昭和のアングラがどんどん遠くなってきますね。
「ふしあわせという名の猫」、もう題名からしてぐっときますよね。
寺山修司・作でしたよね、たしか。
Commented by interlineaire at 2010-01-29 01:02
ユミさん、お久しぶりです!
3月4日に新宿ピットインで浅川マキさんのお別れ会あるみたいですね。
私は行けませんが。。(泣)
そうそう、『ふしあわせという名の猫』は寺山作ですよね。
実はこういう新宿ゴールデン街的なものへの憧れがあります。。。
エッセイ集はもう一箇所、すごい好きな箇所がありました。
「なぜ、男と女の歌ばかり歌うのかと聞かれたら、
その問いはライブにやってくる観客にゆだねたい、
それはいつだって少数派の人々なのだけれど。。」という
アンダーグラウンドで生きることについて語ったところ。
ユミさんのツボだったところもまた聞かせてくださいね(笑)
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